内容が古くなっている可能性がありますのでご注意下さい。
(オープン)データのビジュアライゼーションに関して、何回かに分けて記します。
第1回目は、D3.jsとGeoJSONを用いて、2012年の日本の県別人口をビジュアライズしてみることにします。
D3.jsは、データビジュアライゼーションのための、オープンソース(BSDライセンス)のJavaScriptライブラリです。D3は、Data-Driven Documentsの略です。
GeoJSONは、おなじみのJSON(JavaScript Object Notation)を用いた、地理空間データ交換フォーマットです。
GeoJSONのデータを用いてD3.jsで日本地図を描き、人口の多寡によって県を塗り分ける、というのが今回のゴールです。
県別人口のデータは、政府統計の総合窓口(e-Stat)から入手できます。しかし、Excelファイルのため、余分な行と列を削除し、文字コードをUTF-8に変換し、カンマ区切りのCSVファイルする必要があります。先頭行では、列名を
ken,population
と定義します。ファイル名はpop2012.csvとします。
日本地図のGeoJSONファイルの作成は、
- Shape形式の地図データの入手
- GeoJSON形式への変換
という2つのステップが必要です。以下の作業は、
こちらのページ[1]を参考にさせて頂きました。
まず、Natural Earthから、Shape形式の地図データを入手します。Natural Earthは、たくさんの地図データをpublic domainで提供しています。今回は、
http://www.naturalearthdata.com/downloads/10m-cultural-vectors/
の「Admin 1 – States, Provinces」にある
ne_10m_admin_1_states_provinces.zip
をダウンロードします。
次に、GDAL(Geospatial Data Abstraction Library)に含まれるogr2ogrコマンドを使用して、Shape形式からGeoJSON形式に変換します。また、ダウンロードしたファイルには世界中の地図データが含まれていますので、-whereオプションを用いて日本の地図データのみを抽出します。
ogr2ogr -f GeoJSON -where geonunit=\"Japan\" japan.json ne_10m_admin_1_states_provinces.shp
GDALは、オープンソースの地理情報システムQGISにも同梱されていますので、QGISをインストールするのが手っ取り早いと思います。Windows環境で、QGISを含むオープンソースのGIS(Geographic Information System)を色々と試してみたいときは、OSGeo4Wがお勧めです。
変換したてできたjapan.jsonファイルは、なぜか静岡県のみ県名が入っていないので修正が必要です。
“name_local”: null
となっているので、
“name_local”: “静岡県”
と修正します。
人口と地図のデータができましたので、いよいよ本題に入ります。HTMLファイルの完全なリストは以下のとおりです。
<!DOCTYPE html> <html> <head> <meta charset="utf-8"> <title>D3.js & GeoJSON sample</title> <script type="text/javascript" src="d3.js"></script> </head> <body> <script type="text/javascript"> var w = 800; var h = 600; var svg = d3.select("body") .append("svg") .attr({width:w, height:h}); var projection = d3.geo.albers() .center([-15, 36]) .rotate([210, 0]) .parallels([50, 60]) .translate([w/2, h/2]) .scale([1500]); var path = d3.geo.path().projection(projection); d3.csv("pop2012.csv", function(data) { d3.json("japan.json", function(json) { for(var i=0; i<data.length; i++) { for(var j=0; j<json.features.length; j++) { if( data[i].ken == json.features[j].properties.name_local ) { json.features[j].properties.population = data[i].population; } } } svg.selectAll("path") .data(json.features) .enter() .append("path") .attr("d", path) .style("fill", function (d) { var population = d.properties.population; if( population > 10000000 ) var c = "darkred"; else if( population > 5000000 ) var c = "orangered"; else if( population > 2500000 ) var c = "orange"; else if( population > 1000000 ) var c = "gold"; else var c = "yellow"; return c; }) .style("stroke", "gray") .style("stroke-width", "0.5px"); }); }); </script> </body> </html>
まず最初に
<script type="text/javascript" src="d3.js"></script>
でD3のライブラリを読み込みます。これでD3の豊富な機能を利用することができます。
今回は、HTML文書のbodyはscriptのみです。
早速、D3を使います。まず、
var w = 800; var h = 600;
描画をするための領域であるSVG(Scalable Vector Graphics)要素の幅と高さの変数を定義し、D3を用いてSVG要素を作成します。次の
d3.select("body")
では、HTMLのbody要素を選択しています。選択されたbody要素に対して、
.append("svg")
でSVG領域を追加(append)します。さらに、
.attr({width:w, height:h});
で、SVG要素の幅と高さを設定します。これらを
var svg = d3.select("body").append("svg").attr({width:w, height:h});
のように1行で記述することもできます。
このように、ピリオドを使ってメソッドを連鎖させる記法をチェイン構文と言います。
次に、地図を描画するための準備をします。
var projection = d3.geo.albers() .center([-15, 36]) .rotate([210, 0]) .parallels([50, 60]) .translate([w/2, h/2]) .scale([1500]);
まずは投影法(projection)を定義します。投影法とは、3次元の球面である地球表面を2次元の平面上に表現するための方法です。ここでもチェイン構文を用いてたくさんの設定をしています。各メソッドに渡している値については、こちらのページ[2]を参考にさせて頂きました。
次の
var path = d3.geo.path().projection(projection);
では、地図を描画するためのパスジェネレータを定義します。
ここから少し難しくなります。
d3.csv("pop2012.csv", function(data) {
でCSVファイルを読み込みます。csv()の最初の引数は、読み込むCSVファイルの名前、2つ目の引数はCSVファイルを読み込んだときに実行するコールバック関数になります。
function(data) { 以降、</script>の前の行の } までが、コールバック関数の定義になります。
csv()のコールバック関数では、はじめに
d3.json("japan.json", function(json) {
でJSONファイルを読み込みます。そして、json()のコールバック関数の定義が始まります。
for(var i=0; i<data.length; i++) { for(var j=0; j<json.features.length; j++) { if( data[i].ken == json.features[j].properties.name_local ) { json.features[j].properties.population = data[i].population; } } }
では、CSVデータとJSONデータを突き合わせて、(CSVではken、GeoJSONではfeatures.properties.name_localに入っている)県名が一致したら、CSVに入っている人口の値をJSONデータに追加します。
いよいよ、描画が始まります。
svg.selectAll("path")
で、path要素を選択します。しかし、この時点ではまだpath要素は存在しません。次に
.data(json.features)
でjson.featuresデータをバインドします。しかし、json.featuresデータに対応するpath要素はまだ存在しないので、
.enter()
でjson.featuresの各データに対応するプレースホルダ要素を取得し、
.append("path")
でpath要素を追加します。これで、GeoJSONに入っていた都道府県(json.featuresの各データ)に対応するpath要素ができました。以降では、描画のための設定をします。
.attr("d", path)
で、はじめに投影法を指定して作成しておいたパスジェネレータを属性として指定し、
.style("fill", function(feat) { var population = feat.properties.population; if( population > 10000000 ) var c = "darkred"; else if( population > 5000000 ) var c = "orangered"; else if( population > 2500000 ) var c = "orange"; else if( population > 1000000 ) var c = "gold"; else var c = "yellow"; return c; })
人口に応じて塗りつぶしの色を指定します。
関数の引数featには、データバインドしたjson.featuresが渡されますので、feat.properties.populationで人口の値が得られます。この値によって異なる色を返します。
最後に、
.style("stroke", "gray") .style("stroke-width", "0.5px");
線の色と太さを指定しておしまいです。
実行結果は、以下のようになります(画像キャプチャです。実際のHTMLの表示はこちら)。
余談ですが、山梨県の人口が意外に少ないことに驚きました。
Firefoxの場合は、同じフォルダにd3.js、japan.html、japan.json、pop2012.csvを置いてjapan.htmlを開けば上のような地図が表示されますが、Chromeでは何も表示されません。「デベロッパーツール」を表示すると「cannot load …. Cross origin requests are only supported for HTTP.」というようなエラーメッセージを見ることができます。Chromeを使用する場合は、Webサーバにファイルを置いてHTTP経由で参照するか、Chromeの起動時に「–allow-file-access-from-files」オプションを付ける必要があります。
ダウンロード
japan.zip
参考ページ
[1] D3.js で日本地図を描く, y_uti のブログ
[2] D3.jsとTopoJSONで地図を表示してみた その4, stylesslab-annex