島ペディア@備前 参加レポート

Wikimedia Advent Calendar 2018 | 10日目

瀬戸内海の島々を舞台に、9月から11月にかけて計4回開催された「島ペディア@備前」についてレポートします。

島ペディア@備前は、備前県民局協働による地域づくり事業およびアーバンデータチャレンジ2018岡山ブロックの拠点イベントとして、一般社団法人データクレイドル主催、備前県民局共催で開催されました。
私は執筆対象の検討や文献調査の段階から支援し、イベント当日は講師(ファシリテーター)として参加しました。そのため、運営側の視点も交えてレポートします。


島ペディア@備前『日生諸島』

  • 日時:2018年9月8日(土) 10:00~17:00
  • 会場:サンバース(岡山県備前市日生町寒河2570-31)
  • 執筆対象:大多府島鹿久居島頭島鴻島(いずれも加筆)

この日は朝から生憎の雨でした。前泊した播州赤穂から日生までは電車でたったの15分。兵庫県赤穂市のすぐ西隣に岡山県日生町があることを今回初めて知りました。
日生駅近くの日生町観光情報センター・サンバースに集合し、チャーターした大生汽船の旅客船、NORINAHALLEのりなはーれ)に乗船。

NORINAHALLE(のりなはーれ)

船の中では、主催者からのイベント趣旨説明、岡山県立大学デザイン学部の嘉数教授による写真撮影に関するレクチャーが行われ、私からはウィキペディアタウンについての簡単な説明をしました。
その後、観光ガイドの方にマイクが渡りましたが、島々の間を進む船の外では風景が目まぐるしく変わっており、「説明したい所をたくさん通り過ぎた」と残念がっていました。船の上からでなければ見られない光景があるので、乗船前にできることは先に済ませておくのが良かったと思います。

やがて船は大多府島に近づき、船上から夫婦岩勘三郎洞窟、元禄防波堤などを見学。

夫婦岩
勘三郎洞窟

大多府島に上陸すると、まずは加子番所と六角井戸を見学。

六角井戸

そのあと少し坂を登ってお日待台へ。

お日待台

一見すると、海を眺めてくつろぐのに丁度いいベンチのようですが、正月に行われるお日待ちの時に供え物を置くための台ですので、座ってはいけません。
多分、当初の計画では燈籠堂に行く予定だったのだと思いますが、ガイドさんが話したお日待ちに私が関心を示したために急遽予定が変わり、燈籠堂には行きそびれてしまいました。燈籠堂の方が絵になりますが、とは言っても復元されたものですので、良かったのか悪かったのか。

船乗場の近くに戻ると題目塔を発見。後に犬島や前島で見ることとなる花崗岩とよく似た色合いですが、石の産地は不明です。

題目塔

再び乗船し、頭島大橋をくぐったり、牡蠣筏を間近に見たりしながら、日生港に戻りました。

頭島大橋
牡蠣筏

日生での昼食は牡蠣のたくさん入ったお好み焼きで、その名もカキオコ。とても美味しかったです。
執筆会場のサンバースでは日生町の土産物も販売しており、日生みかんのジャムを購入しました。温暖な気候に恵まれた日生諸島では、いくつかの島でみかんが栽培されているのです。

午後は、ウィキペディア編集に関するレクチャーの後、あらかじめ用意してあった文献を使用して執筆作業。大多府島鹿久居島頭島鴻島に「島内」セクションを中心とした加筆をしました。また、コモンズへ写真をアップロードして大多府島に「ギャラリー」セクションを追加し、コモンズに大多府島のカテゴリページCategory:Ōtabujimaを作成しました。


島ペディア@備前『石島』

  • 日時:2018年10月27日(土) 9:30 ~ 17:00
  • 会場:玉野産業振興ビル3F技術研修室(岡山県玉野市築港1-1-3)
  • 執筆対象:井島(加筆)

執筆会場があるのは宇野港です。宇野港と言えば宇高連絡船。思わず、体内の鉄分が反応してしまいます。会場の1階には、かつての宇野駅のジオラマがありました。

今回は乗船前に約30分ほど時間をとり、執筆会場でウィキペディアタウンとウィキペディア執筆についての概要説明をしました。

石島への定期船は運行されていないので、川西マリンサービスの海上タクシー・アルバトロスに乗って石島へ。

アルバトロス

豪快に水しぶきをあげて海上を疾走し、15分ほどで石島港に到着。

石島港

石島には岡山県と香川県の県境があり、香川県側の名前は井島です。ウィキペディアには、井島の名前で既に記事があります。

当初は全員で展望の良い山へ向かう計画でしたが、古墳を見たいという私の強い要望により、2グループに分かれての行動になりました。これは、結果的には良かったと思います。ガイドして下さったのは島に住む方お二人で、とても健脚です。

古墳への道はなかなか険しい山道でしたが、山の上からの眺めは素晴らしいものでした。

2011年の火災によって黒く焦げた木や、立ち枯れた木が随所で見られましたが、少しずつ回復している様子が窺われました。

そしていよいよ古墳です。石島1号古墳は、山頂から少し下ったところにありました。石室が開口し、石組みもしっかりしています。

石島1号古墳

石室の中に入ることもできます。内部はとてもきれいで、石仏が祀られていました。

石島1号古墳

天井に小さな穴が空いており、今後、雨によって劣化が進まないか心配です。
古墳の写真はコモンズでも公開してあります。これまでネット上でいくら探しても見つからなかった幻の古墳の写真をオープンデータにすることができたのは良かったと思います。

山を下る途中では、石島港周辺の集落を眺めることができました。

道沿いには石島八十八石仏がいくつかありましたが、だいぶ風化が進んでしまっています。

石島八十八石仏

標高が下がると、美しいシダ類が現れます。

ホラシノブ
コシダの群落

ガイドして下さった方々との別れを惜しみ、船上と港で互いに手を振る間にも船は猛スピードで疾走し、あっという間に島を離れてしまいました。

宇野港に戻り、ご当地グルメの「たまの温玉めし」を食べてから午後の部です。
午前中の説明時間を多くとったため、午後はマークアップを中心に説明してから、あらかじめ用意してあった文献を使用して執筆です。

既にある石島の記事のタイトルが「井島」なのは少し残念ですが、石島にしようとすると「石島 (岡山県)」にすることになるので、仕方ありません。井島に「島内」セクションと「ギャラリー」セクションを追加しました。
特筆すべきは、「島内」セクションに追加した地図です。ウィキペディアでインタラクティブなマップを使用できるようになったのは比較的最近のことなので、まだ、あまり利用例は多くないと思います。島のように限られた範囲についての記事では、このようなマップは有効だと思います。


島ペディア@備前『犬島』

  • 日時:2018年10月28日(日) 9:00 ~ 16:00
  • 会場:岡山市立犬島自然の家 天体講習室(岡山市東区犬島119番地1)
  • 執筆対象:岡山市立犬島自然の家(新規)

今回だけは、執筆会場も島内です。定期船の時間の都合上、開始時間も終了時間も早くなっています。9時開始なら、それほど早くもないだろうと思うでしょうが、犬島行の船が宝伝港を出るのは8時です。宝伝港へは岡山駅から車で1時間近くかかるため、送迎バスが岡山駅を出発したのは6時50分でした。

宝伝港から犬島は目と鼻の先。定期船のあけぼの丸に乗って5分ほどで犬島に到着しました。

あけぼの丸

執筆会場の岡山市立犬島自然の家は、旧犬島小・中学校を利用した施設です。

岡山市立犬島自然の家

そして今回は、執筆会場が執筆対象でもあります。当初、主催者からは犬島が加筆の対象候補として挙げらました。しかしこの記事、なんと「良質な記事」に選ばれています。既に完成度の高い記事に対して、執筆に不慣れなイベント参加者が加筆するというのは望ましいことではありません。そこで、公共施設であり、学校としての歴史もある岡山市立犬島自然の家を新規記事として執筆する方針にしました。

ウィキペディアタウンとウィキペディア執筆についての概要説明をしてから、所長さんの案内で犬島自然の家の現地調査です。
天体望遠鏡や木造校舎などを見てから、外に出ました。


浜辺に出る途中には小さな植物園があり、烏骨鶏が放し飼いにされていました。切り出された犬島みかげ石もたくさん見ることができます。
浜辺にはキャンプ場もあり、夏にはシーカヤックやキャンプも楽しめるそうです。


島をぐるりと一周するように歩き、途中で銅製錬所の煙突を遠望し、港の近くに戻って昼食です。

ここで緊急事態が発生。もともと食事のできる店が少ないのに臨時休業?の店が2店あり、昼食時間が大幅にオーバーしてしまいました。

今回は新規記事の執筆なのに、執筆開始が遅れるというのは不安です。17時15分の最終便(日曜以外では18時45分の便があります)に間に合わないと大変なので、時間を延長することはできません。
マークアップの説明は簡単に済ませて、チーム分けをして早速執筆を開始。岡山市立中央図書館にも協力頂いて参考文献が用意されていたので、無事に時間内に新規記事・岡山市立犬島自然の家を完成させることができました。
執筆会場が執筆対象でもあるため、執筆の途中で写真撮影に行く参加者もいました。そのため、「ギャラリー」セクションが充実したものになりました。


島ペディア@備前『前島』

  • 日時:2018年11月10日(土)14:00~16:10、11日(日)13:00~17:00
  • 会場:瀬戸内市民図書館もみわ広場 つどいのへや(岡山県瀬戸内市邑久町尾張465-1)
  • 執筆対象:前島 (岡山県)(加筆)

初日

最終回は2日に分けての開催です。午後からということで前泊せずに当日朝の新幹線で向かったところ、何と、車両点検の影響で岡山の先は運転見合わせ! 岡山駅の手前で停車したまま動かない電車の中で不安な時間を過ごしましたが、幸い、その後の行程に影響が出るほどの遅れにはなりませんでした。
フェリーの出発時間までは余裕があったので、牛窓港にある瀬戸内市観光センター・瀬戸内きらり館でお土産に牡蠣味噌を購入しました。

全員が集合したところで、乗船前にウィキペディアタウンについての簡単なレクチャー。後で後悔しないよう、気になったものは何か分からなくてもとりあえず写真をとっておきましょう、とアドバイスしました。

前島にはカーフェリー・第七からことで5分程度で着きました。変わった名前ですね。

第七からこと

現地調査はレンタサイクルのグループと徒歩のグループの2つに別れて実施。私はレンタサイクルグループでした。自転車には10年以上乗っておらず、しかも電動アシスト自転車ということでおっかなびっくりなサイクリングとなりました。

最初に向かったのはサンビーチ前島。CMのロケ地にもなったそうです。

サンビーチ前島

砂は風化した花崗岩で、通常の砂浜より粒が大きて滑りやすく、転びそうになりました。

次に向かったのは、石切場跡です。前島の石は大阪城の石垣にも使われましたが、運び出されずに残った石も多くあります。石を切り出すために穿たれた矢穴の残るものもあります。

大阪城築城残石群

残石の中には、刻印の見られる石もあります。こちらは松江藩堀尾家の刻印です。

石切場の近くには展望台もあり、前島とと牛窓との間の唐琴の瀬戸を眺めることもできました。フェリーの名前は唐琴の瀬戸に由来するのですね。

唐琴の瀬戸

港に戻り、大鯨供養塔を見てから乗船。

大鯨供養塔

4回の船旅はこれが最後。感慨にふける間もなく、前島を離れたフェリーはすぐに牛窓に着いてしまいます。

2日目

2日目は、Library of the Year 2017 優秀賞を受賞した話題の図書館、瀬戸内市民図書館もみわ広場をお借りして記事の執筆です。新しい図書館で、外見も屋内も明るくて綺麗です。

瀬戸内市民図書館もみわ広場

瀬戸内市民図書館で用意して頂いた文献を用いて前島 (岡山県)の執筆。今回は「島内」「ギャラリー」セクションの他に、「ロケ地」セクションも追加しました。風光明媚な前島は、テレビ番組や映画、CMなどのロケに利用されているのです。
ロケ地について書くという発想は私には全くありませんでした。多くの人が共同して記事を書くことによって様々な視点から対象を描くことができるというのは、ウィキペディアタウンの良い所だと実感しました。

前日に徒歩で現地調査をした参加者から、行くことができなかったと聞いていたお大師堂が、撮影した写真の中に含まれていたことが執筆時間中に判明し、他にも地神塔も撮影していたことが分かったので「ギャラリー」に追加して頂きました。これらの写真も、共同作業のなかで発見されなければ死蔵されてしまうところでしたので、ウィキペディアタウンのメリットが発揮されたと言えるでしょう。

今回も島内のマップを作りました。マップを作成したのは技術者の方でしたので、ポイントによってマーカーのアイコンを変えるという改良を加えて頂きました。回を重ねる度に少しずつ成果物が良くなってゆくのは嬉しいことです。


まとめ

計4回にわたって開催された「島ペディア@備前」。通常のウィキペディアタウンと比べると、現地への交通手段という制約が大きく、各回毎のイベントの組み立ては難易度が高かったと思います。

  • 島の数が多いのでチャーター船で船上からも現地調査(第1回・日生諸島)
  • 定期船が運行されていないので海上タクシーを利用(第2回・石島)
  • 定期船の時間が限られ、港までの交通も不便なので送迎バスを用意し、島内で執筆まで実施(第3回・犬島)
  • 2日に分けて開催(第4回・前島)

主催した一般社団法人データクレイドルの苦労が偲ばれます。

事前の文献調査で役に立ったのは日本離島センターの「日本の島ガイド『SHIMADAS(シマダス)』」です。この本自体を出典とすることも、この本で示された参考文献が役立ったこともありました。島について調べる際の最初の一冊としてお薦めです。

最後に、今回の貴重な体験の機会を与えて頂いた一般社団法人データクレイドルと岡山県備前県民局の皆様、岡山県立大学デザイン学部の嘉数先生、案内をして下さった島の皆様、会場を提供して頂いたサンバース、玉野産業振興ビル、岡山市立犬島自然の家、瀬戸内市民図書館もみわ広場の皆様、文献を用意して頂いた岡山市立中央図書館と瀬戸内市民図書館の皆様、そしてイベントに参加して頂いた皆様に、感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。